最近”肩甲骨剥がし”という言葉をよく耳にします。
肩甲骨の内側に深く指を入れて動かすことで肩を楽にする──そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
たしかに一時的なスッキリ感は得られるかもしれません。
しかし、解剖学・運動学の観点から見ると、いくつか注意したい点があります。
”肩甲骨剥がし”で注意が必要な理由
1. 肩甲骨は“浮き上がる”構造ではない
肩甲骨は胸郭の上を「滑るように」動く仕組みになっています。
日常生活で大きく浮き上がることはありません。
2. 筋肉を傷つけるリスクがある
肩甲骨の内側に強く指を押し入れると、僧帽筋や菱形筋などの筋肉を圧迫し、組織を痛めてしまう恐れがあります。いわゆる「揉み返し」もその一例です。
3. 肩は複数の関節が協調して動いている
肩関節は1つではなく、胸鎖関節・肩鎖関節・肩峰下関節・肩甲上腕関節・肩甲胸郭関節という5つの関節の総称です。
そのうち「肩甲胸郭関節」だけを強調して動かすのは、協調性を無視した偏った介入と言えるでしょう。
当院の考え方:『肩甲帯浮かし』
当院では”肩甲骨剥がし”ではなく、**『肩甲帯浮かし』**というアプローチを行っています。
肩甲帯とは、肩甲骨だけでなく鎖骨・上腕骨(近位端)を含めた総称です。
肩甲帯は、胸郭の上に乗っているように見えますが、実際には筋肉を介した隙間があり、呼吸の動きを邪魔せずに肩を動かすことができます。
この仕組みを活かし、肩甲帯全体を胸郭からふわっと浮かせるように整えていくのが『肩甲帯浮かし』です。
得られる効果
施術では肩甲帯の筋を表層から順に丁寧に働きかけ、全体の協調性を整えます。
30分ほどのアプローチで、
- 肩まわりの軽さ
- 呼吸のしやすさ
を実感していただける方が多いです。
まとめ
”肩甲骨剥がし”は一時的に気持ちよくても、必ずしも体にとって良いとは限りません。
肩甲帯全体のバランスを整える『肩甲帯浮かし』の方が、自然な動きを取り戻すうえで有効だと考えています。
『肩甲帯浮かし』という言葉は、私の思いつきの言葉です。でも、とっても手ごたえのある介入方法だと思っています。ぜひ、たくさんの方に体験していただきたいです。


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