『コズモグラフィー シナジェティクス言論』
バックミンスター・フラー著
私がこの本に出会ったのは、もう10年以上前のことです。
筋膜構造を魅力的に描いた『アナトミー・トレイン』の中で「テンセグリティ」という言葉に出会い、「もっと深く知りたい」と思ったのがきっかけでした。
それ以来、この本は私の臨床に欠かせない一冊になっています。臨床で行き詰まったときにふと開くと、なぜか元気になり、新しいアイデアが浮かんできます。そんな不思議な力を持った本だからこそ、コラム“私の愛読書紹介”の最初の一冊に選びました。
バックミンスター・フラーは「テンセグリティ」という概念を生み出した建築家です。
いざ読んでみるとこれが本当に難しい。正直に言うと、今でも理解できていません。それでも、なぜか惹かれ、気づけば5回以上も読み返しています。
彼は医療者ではなく建築家ですが、
「宇宙の構造は全体で一つである」
「複雑な構造を、最も単純化するとどうなるのか?」
という問いは、複雑な人体を理解するうえで非常に参考になります。
なかでも、「構造は張力と圧迫のバランスで成り立っている」という考え方は、柔軟さと硬さをあわせ持つ人体を考えるうえで、とてもしっくりくるものでした。
割りばしと輪ゴムがあればテンセグリティ構造を簡単に作ることができます。
初めてその模型を作ったとき、私は「臨床で触れている感覚」と驚くほど近いものを感じました。
バックミンスター・フラーは、私に人体の神秘と芸術性を追求するきっかけを与えてくれた人物です。



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